膝にある前十字靭帯は、サッカーやバレー、バスケットボールなど様々な競技においてジャンプの着地動作や切り返し等の動作によって損傷します。
損傷後、靭帯の再建術を行うと最低でも半年間は競技復帰ができなくなるので、前十字靭帯損傷の予防や損傷メカニズムに関する研究は世界中で行われています。
すでに、前十字靭帯がどのような姿勢で切れるのかは科学的に明らかになっています。
これが靭帯の切り方です↓
Knee-in Toe-out(つま先を外、膝を内側へ)
体幹を後方へ倒し、重心を後方へ
膝を前に突き出すように
長年の疑問・・・・
実は、自分の靭帯を自分で切ったヒトの研究は、世界中探しても見つかりません。 実験の途中で、不運にも足の捻挫が起こったり、肉離れをしたというような研究は散見されますが、前十字靭帯を自らの意思で切った研究というのは存在しないのです。
これって、結構な発見ではないかと密かに思っています。
なぜ、自分で靭帯は切れないのか?
靭帯が切れない原因は、無意識で発動される反射にあります。
例えば、下の図のようにヒトは転んだり、倒れたりするときに自然に手が出るような仕組みが備わっています。
下図は、保護伸展反応(パラシュート反応)とも呼ばれる反射・反応で、生後半年頃から獲得され、生涯この反応は現れつづけます。
ヒトは、意識しないながらも、バランスを保ったり、身体が傾いたら正中位(真ん中)に戻そうとする働きを持っています。
姿勢が崩れると無意識に戻そうとするのです。
また、痛みや危険がある場合にもそれを避けるように身体が反応します。
反射・反応は意識して運動を行う(随意運動)よりも強力に作用するため、身体を守る防御機能として必要不可欠な仕組みなのです。
もし仮に、自分で自分の靭帯を切断し、それを動作分析で関節の動きを記録し、筋電図や脳機能など同時に測定することができれば、障害予防研究に新しい風を吹かせることがかのうとなるかもしれません。
ただし、倫理的な問題が大きな壁となるので、研究者が自ら実験台となって証明するしか方法はなさそうです。
ノーベル賞に匹敵する・・かも
実は、同じような先行研究でノーベル賞を取った内容があります。
これは、胃がんの原因と考えられているヘリコバクター・ピロリ菌が発見された経緯を模した考えです。
2005年のノーベル医学・生理学賞が、ヘリコバクター・ピロリの発見者である西オー ストラリア大学のウォーレン教授とマーシャル教授に授与されたのですが、そのエピソードは非常にインパクトがあります。
まず、ウォーレン教授が胃炎の存在に細菌の感染を疑って研究をしていたのですが、胃炎の病変部位にピロリ菌がいることはわかったのですが、ピロリ菌が胃炎の原因かどうかはわかりませんでした。
そこで共同研究者であった、マーシャル教授は豚などを使ってピロリ菌が胃炎を引き起こすことを証明しようとしましたが、上手くいきません。
そこで、後がなくなったマーシャル教授は遂に自分でピロリ菌を飲むことによって、証明するに至ったのです。
ピロリ菌の飲用後、1週間後の早朝、激しい吐き気と嘔吐を繰り返し、内視鏡検査では急性胃炎の所見が確認され、ピロリ菌の感染も確認されたのです。
この発見の経過は、複数の論文にまとめられ、現在ではピロリ菌の病原性が全 世界でコンセンサスを得ているのです。
そんなこんなで・・・
自分で自分の靭帯を切ることができれば、スポーツ医学の世界でノーベル賞級の研究になることは間違いありません。
信じるか、信じないかは・・・あなた次第です。
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