現在進行中の研究があるのですが、なかなか論文化できない現象が起こっているので先にブログで公表してみたいと思います。
研究者は、世界的な論文を書いて地位と名声を得て勝負していくのですが、インターネットで情報を発信する時代において、仮説だけなら個人的に発信したほうが面白いのではないかと思っております。
今回の仮説は、前十字靭帯損傷に関する新しい発症要因の仮説です。
本当に靭帯が切れた瞬間の動作分析というのは、世界でもほとんど実例がないわけです。スポーツ障害のほとんどの臨床研究は仮説に過ぎません。
なぜなら、実験中にケガをさせるわけにはいかないので・・。
今回の内容は、前十字靭帯損傷の予防に関する研究なのですが、対象者にはダッシュから急激に方向転換をするカッティング動作を行ってもらいます。
ある認知課題を行うことで、下記の2つのような動きが起こります。
①方向を間違え、左膝が内側に入る
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②急激に方向を変えるため、右脚の大きく開く
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前十字靭帯損傷を誘発する方法
①のような、膝が内側に入る動作というのは、膝関節の外反といって前十字靭帯損傷の危険因子とされている動作です。
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また、②のように脚が大きく開く状態も、専門的には股関節の外転角度が大きくなることを示しており、こちらも前十字靭帯損傷の危険因子となります。
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これらの2つの動作は、ある認知課題を行わせることで靭帯損傷を引き起こす危険な動作を誘発しています。
なぜ、このようなことが起こってしまうのでしょうか?
無意識からは逃れられない・・
そもそも、右に行くか、左に行くかをどのようにヒトは決めているのでしょうか?
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多くの人は、自分が右に行くか、左に行くかを決めていると思っていますが(自由意志による)、考えて動いていては間に合いません。
実は、高速で動いている状態では頭で考えて判断していては間に合わないことが多いので、ほとんど無意識で身体が動くようなメカニズムが働いていると考えられます。
つまり、まずヒトは無意識にどちらかの方向を進むようにプログラミングされており、それを修正する形で逆方向に行こうとするようです。
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これは、脳の経路から考えると無意識の視覚情報から身体を動かす神経の経路と考えてから身体を動かす神経経路の違いによるものと推測されます。
これはあくまで、仮説ですが・・
認知的エラーが原因と思われます。
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脳の詳細なメカニズムについては、説明が難しいのですが私達の身体は無意識に動かす部分が協力に作用しており、無意識に逆らう形で意識が存在しています。
考えて行動するというのは、非常に人間的な作業です。
野生の動物が、ケガがしにくいのは考えて行動することが少ないからだと思っています。
人間は、考えて身体を動かす経路と無意識に身体を動かす経路が混在しており、その経路の活動のタイミングによるエラーが障害発症の一因ではないかと考えています。
めちゃくちゃ検証が難しい
上の2つの映像は、偶然撮影することができたものです。
研究として、明らかにしたいところなのですが、この現象が起こる確率は極めて低いのが実際です。
同じ対象者でも、同様の事象が起こるのは10回に1回もなく、カッティングの方向は認知判断のタイミングに依存するため、高速で動いている場合には同じ動きを再現することが非常に難しいのです。
靭帯損傷が起こるのは、数年に1度、人生において1度あるかないかのエラーではないか、というのが私の仮説です。
起こる確率が極めて低いので、研究として再現することが難しいのです。
加えて、これが神経の仕業だと考えたとしても、高速の状態で脳活動を記録できる装置は今のところこの世に存在していません。
数十年先には、この仮説が科学的に検証されることを楽しみにしたいと思います。
ぜひ、どなたか検証をお願いします!
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