ヒトが運動をするときに避けて通れない敵がいます・・
最大の敵は、重力です。
重力に支配される身体
実は、ヒトは姿勢や運動を無意識に調節することができるのですが、何に合わせて調整されているかというと、それは重力です。
身体の重心に対して、重力がかかることを制御しているのが姿勢を保つということです。実は、この当たり前の現象がスポーツ障害に大きく関係しています。
生まれつき備わっている能力
ヒトは生まれてから様々な能力を獲得していくのですが、重力に対して身体を支える能力は、生まれつき備わっているものの一つです。
そうした生まれつき備わっているものの一つが原始反射と呼ばれる、反射活動ですが、その中に生後直ぐに歩くような動作をみせる、陽性支持反応と呼ばれるものがあります。
これは、赤ん坊の足を床につけて重心を前に傾けると歩くような動きをみせる反応です。
基本的にヒトの動きは、重心に対して抗する働きが強く身体に根付いています。こうした抗重力的な反応は脳の中でも皮質下と呼ばれる部分の活動によって作られており、皮質下の成熟が起こった後に、随意的な運動ができるようになります。
つまり、無意識での重力に抗する動きが先で、意識的な動きは後に獲得されるということです。
この現象は、多くの動物に元々備わっているものであり、生まれたての仔馬がすぐに立てるようになっているのも、生得的にこうした能力が存在するからです。
無意識の抗重力反応
無意識での抗重力反応の力は強力で、私たちが高いところから飛び降りても着地できますし、バランスを崩しても足を突っ張ることによって姿勢を保持できるようになっています。
一方で、困ったことも起こります。
例えば、ジャンプの着地動作の際に膝が内側に入り、体幹が側屈して姿勢が崩れた状態で着地しようとします。
このとき、下肢で踏ん張らずにそのまま倒れると膝への負担は少ないのですが、ヒトの神経の仕組みから必然的に下肢が踏ん張って姿勢を保持しようとしてしまうのです。
ジャンプの着地動作の衝撃を減らすためには、膝を深く屈曲させて、柔らかくて着地する事が必要です。
しかしながら、元々ヒトの神経システムは着地で突っ張るように無意識でプログラム化されているのでどうしても抗重力の筋肉が先に働くようになっているのです。
慢性的な症状は抗重力筋の影響が大きい
実は、スポーツ障害の中でも慢性的な症状の多くがこの抗重力筋の関連したものです。意外にこの事実が無視されていることが多いのが実状です。
・膝蓋腱障害 = 大腿四頭筋
・アキレス腱障害 = 腓腹筋・ヒラメ筋
・腰痛 = 脊柱起立筋
重力の影響を考慮して、ヒトの重心をどのように動かし、どのように扱うかによって動きを変化させることが必要です。
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