イニエスタのダブルタッチを科学する

ダブルタッチとは

ダブルタッチはサッカーのドリブルテクニックの一つで、両足のインサイドを使って、左右にボールを瞬間的に移動させて、ボールを運ぶ技術です。

相手選手が脚を出してきた瞬間に、ボールを左右に動かすことによって敵をかわすことが可能です。

ダブルタッチで有名なのが、FCバルセロナに在籍していたアンドレアス・イニエスタ選手です。

イニエスタ選手のタッチの特徴

イニエスタ選手のダブルタッチの特徴は、ボールタッチが非常に細かいことと、脚の開き具合(足の横幅)が比較的狭いことです。

脚の開きが小さいことは、身体を動かす際に素早く動ける利点があります。

例えば、一般的な選手の場合(左下図)には脚の開きが大きくなりますが、この体勢をとった段階で、この選手は左方向に進むことは明らかです。一方で、脚の開きが小さい場合には左右方向への力は少ないので、ステップを踏み替えることによって逆方向に行きやすくなります。

脚の開きが小さい利点は、重心と足の接地位置が近くなるので左右どちらの方向にも進みやすいので相手の重心の逆側を取りやすくなります。

なぜ、この動作ができるのか?

体幹ー股関節ー足関節の外側のLINEが安定していないと、素早いダブルタッチはできません。横方向の力に対抗するためには、本来は脚を開いて踏ん張る必要がありますが、イニエスタ選手は踏ん張るという動きが非常に少ないです。

足の幅が狭いと、ボールが動かせる距離は小さくなるのですが、イニエスタ選手は相手の重心位置の逆をとり、ちょうど足が届かないギリギリの位置にボール運ぶことで最短の移動距離で済むようにコントロールしています。

ボールテクニックだけでなく、相手の状態を観察する高度な認知能力も必要です。

もう1点ダブルタッチの難しさは、タッチした足がボール操作する足から支持する足へと急速に役割を変える必要があることです。

本来、急激に方向転換をした際には、下肢を踏ん張って逆方向の反力を生み出す必要があるので、足幅を広げて対応するのですが、イニエスタ選手は足の幅を広げることなく、ボールタッチをしながら踏ん張ることができます。

技術的に難しいのは、足が最も踏ん張りやすい所に(力が入りやすい位置)2回連続でボールを置かなければ成り立たないことです。

特に、最初のボールタッチのスピードと強さを調整して、ボールを絶妙な位置におく必要があります。

ボールが少しでもズレると、次のボールタッチがズレるか、下肢が踏ん張れないか、体幹が崩れる(流れる)などの状態に陥り、プレーは完成しません。

おそらく、多くの選手は練習することでタブルタッチはできるのですが、相手のプレッシャーを受けた状態で、このテクニックを使って相手を抜くのは非常に難しいのです。

科学的に分析すると、この高度なテクニックを試合の中でできるのは驚愕の一言です。

ダブルタッチは、テクニックと身体の使い方、認知能力が高度に凝縮されたプレーです。

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