筋肥大は善か悪か?

イチローとダルビッシュの論争から考える

過剰な筋肥大が怪我に繋がるという根拠は恐らくありません。怪我の要因は様々なので、筋肥大だけが原因で問題が起こるとは考えられません。

筋肥大やウエイトトレーニングに関しては、多くの意見がありますが、科学的な視点から考察されているものが少ないので個人的に考察してみます。

2人の一流選手の見解

イチロー選手
「人間持って生まれたバランスが大切で、日本人が外国人の真似をしても怪我をするだけ。 パフォーマンスも落ちる。」

ダルビッシュ選手
「筋肉はつければつけるほど良い。筋肉が増加する事によってスピードやスタミナもあがるし、怪我をしやすくなるということもない。外国人はみんな筋肉をつけているし、筋肉増加により怪我をしているという事もない」

どちらも言っていることは正しいです。

この論争のヒントとなる論文を紹介します。

垂直跳びのシミュレーションの研究です。

例えば、ジャンプの動作は下肢の様々な筋肉が協調することによって成立しています(大臀筋、大腿四頭筋、腓腹筋 etc)。

ここで、各々の筋力を20 %ずつ増加させた場合には、標準モデルが40cmであったのに比較して、38cmと数値が低下しています。

次に、ここの筋力を20%ずつ増加させて神経の活動(筋肉が働くタイミング)を調整すると45cmの結果になりました。

つまり、動作においては個々の筋力が上がるだけではパフォーマンスは上らず、筋肉が働くタイミングを上手く調整する必要があるということです。

筋肉を働かせる指令を出す方法は、意識的に動かす場合と無意識に動かす場合の2通りあります。

意識的に動かす場合は 大脳皮質

無意識で動かす場合は 皮質下(中脳、小脳、脊髄)

大脳皮質と皮質下の特徴

大脳皮質:精緻な動きが主体、反応するまでに時間がかかる。

皮質下:大雑把な動き(パターン化された動き)、反応は早い。

ここで、二つの論文から考察してみます。(動物実験の結果から)

細かい作業的なトレーニングを行った場合は大脳皮質の活動が増えます。

ウエイトトレーニングのようなパワーを発揮するトレーニングでは、脊髄の興奮性が高まります。

つまり、パワーを発揮するようなトレーニングを行うと、皮質下の活動が中心になりやすいので、自分が思うように動かせなくなる可能性があるということです。

イチロー選手がウエイトトレーニングを嫌った理由は

自分の身体を思うように動かせなくなるから

ダルビッシュ選手がウエイトトレーニングを入れた理由は

筋力アップ後に、神経の活動を調整することでパフォーマンスが上がるから

ウエイトトレーニングをすると、一時的に上手く身体をコントロールできなくなる可能性があります。投球においては制球が定まらないような現象が起こると思います。

しかし、繰り返し意識的な練習を行うことで神経が最適化され、動きがコントロールできるようになれば、高いパフォーマンスが期待できます。

言っていることはどちらも正しいのです。

1 COMMENT

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です