子どもたちの口癖のように、
“疲れた” “面倒臭い” といった発言が幼稚園児や小学生年代でも聞かれるようになりました。
動くことに対する抵抗感は年々強くなっています。
実際の調査においても、疲れていると答えた青年の割合が34−41%であったとの報告もあります。
今回は、子どもの生理学的特長を解説するとともに、疲労の原因について考えていきます。
子どもは身体的には疲れない
子どもの構造から考えると、大人と比較して疲れにくい構造になっています。その大きな理由は、
筋肉と代謝の問題です。
子どもは基本的に筋肉の中でも、遅筋線維が刺激されやすいようにできています。
筋肉の中には、速筋線維と遅筋線維がありますが、遅筋線維の特徴は力発揮が苦手な分、持久力に優れ、疲れにくいことが挙げられます。
遅筋線維の特徴は、素早く大きな力の発揮は難しいですが、長時間に渡り、60ー70%程度の力を発揮することは得意です。
遅筋線維の中には、ミトコンドリアが存在しており、食事から取った炭水化物、脂質、タンパク質と酸素を利用して、エネルギーを効率よく生み出すことができます。
代謝から考えても、子どもは炭水化物からのエネルギーよりも脂質を効率的にエネルギーに変える仕組みを持っているため、筋肉内のエネルギーに頼る必要がありません。
子どもは速筋線維を使わないので乳酸反応が低く、脂肪の酸化への依存度が高いため、異なる代謝プロファイルと異なる運動単位が使われていることが示唆されています。実際に、脂肪酸化率は若い男性で最高 30%VO 2peakでピークに達したが、11-12歳の思春期前の少年では55%であることが分かっています。
そのため、筋肉や代謝から考えると子どもは疲れないのが普通です。
子どもの疲れの一因は 精神的疲労
子どもが疲れたと感じる理由として
精神的疲労(MENTAL FATIGUE)
というものが考えられます。
精神的疲労の原因としては、2つの要素が考えられています。
①課題の問題:自分にはできないものである
②報酬の問題:自分にはやる意味がないものである
運動にしろ、スポーツにしろ、上記2つの問題が生じている場合に精神的疲労が起こるとされています。
これは、脳の疲労とも考えられており、本能的な脳の部分(大脳基底核)に対して、考える脳の部分(大脳皮質)が行動に抑制をかけている状態です。
子どものやりたいことに対して、大人が口を出しすぎると、子どもが本来持っているやる気にブレーキをかけます。
ブレーキをかけ続けられた脳は、やる気を失い、やる気がないことを学習するようになります。
これを学習性無力感などとも呼びます。
学習性無力感 = 長期にわたってストレスの回避が困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなる現象
指導側が正しい子どもの内面を捉えていないために起こっている問題かもしれません。
当たり前の基準が違う
前回のテーマでも取り上げましたが、そもそもの子どもの運動の基準が下がっている可能性が高いです。
普段から運動をしない子どもにとっては、運動時がストレスになり、精神的な疲労を生み出している可能性があります。
日常生活のレベルをどれだけ担保できるかは、幼少期の生活習慣が大きく関与してくるのです。
精神的疲労を取り除くには・・
子どもの疲れの原因が、精神的な疲労にある場合には、課題や報酬を調節して、対応する必要があります。
ゲームなどを通じて、自然に動き出せる環境を設定したり、チームで協力して動くような課題を設定するなど、個人で動けない子どもを動かす仕組み作りが大切です。
また、子どもたちが興味関心を引き、継続できるような課題を設定したり、憧れる先輩や選手が身近に存在することも大きな要素になります。
大人のせいで、子どもたちが疲れを招かないように工夫していく必要があります。
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