知っておきたいストレッチの科学

障害予防に関して、ストレッチを取り入れている選手やチームは多いと思いますが、ストレッチに関する現在までの研究について整理してみたいと思います。

静的ストレッチはパフォーマンスを下げる?

静的なストレッチがパフォーマンスを下げるという科学的な論文がいくつか出てきたことによって、練習や試合前の静的ストレッチが悪者扱いされているケースが散見されています。

答えを先に言っておきますが

一般的に行われている静的ストレッチがパフォーマンスを下げることはほとんどありません。

静的ストレッチが悪者扱いされているケースは、

1つの筋肉を60秒以上伸ばし続けた場合に限られています。

最近のレビューでは、静的ストレッチに関する研究の69%がパワーや速度の大幅な低下を示してしていないことが明らかにされています。

静的ストレッチの持続時間に基づいて調査結果を分析すると、30秒未満のストレッチはパフォーマンスの低下とは相関せず、60秒を超えるストレッチにおいてパフォーマンスの低下が報告されているのです。

30秒未満のストレッチではパフォーマンスの大幅な低下を報告した研究はわずか14%であり、1分を超えるストレッチの場合は61%であったと報告されています。

静的ストレッチをするときは、時間を少し空ける

静的ストレッチにおいて、パフォーマンスの低下を示した潜在的な要因は、静的ストレッチの実施と運動競技の開始の間のタイミングに問題があります。一般的に公開されている研究の多くはストレッチングに対する即時の応答を検討しています。つまり、長時間のストレッチ直後に測定を行っているのです。

ストレッチングしてすぐにフィールドに足を踏み入れてプレーすることが実際にどの程度あるでしょうか?これが、研究データの使い方の誤解を生みやすいところです。

実際には、静的なストレッチを行った後に5分以上の間隔を空けるとパフォーマンスが低下しないと報告されているのです。

筋肉は長さが重要!!

実際の筋肉は、筋肉の線維と線維が重なった構造をしています。

線維同士が滑り込むようにして、筋肉は伸び縮みするのですが、筋肉が最も力を発揮するのは

伸びすぎず、縮みすぎない最適な長さの時です。

ですから、ストレッチによって筋肉が伸びすぎても力が出ないですし、逆に縮み過ぎてこわばっている状態でも力がでないのです。

静的と動的を組み合わせることが重要

実際にストレッチを行う際には、静的と動的を組み合わせることが重要です。

まずは、自分の身体の硬い場所や可動域がほしい場所に関しては、静的なストレッチでゆっくりと30秒未満の時間で身体をほぐします。

その後、動的なストレッチで身体を動かしながら可動域を広げながら筋肉を適度に使うことが望ましい状態です。

動的なストレッチの後に、ダッシュを入れたり、腕立てやスクワット・ランジ動作など使いたい筋肉に刺激を入れていくのも効果的です。

ストレッチに障害予防効果はない?

一般的な研究では、ストレッチの障害予防効果は実証されていません。

その理由は、

ストレッチは個別に最適化しなければ意味がない。

研究は、全員に対して同じストレッチをして集団に対して効果があったかどうかで検証されます。そのため、ストレッチの効果ははっきりしません。

静的なストレッチは個々の身体の状態に合わせて、必要なストレッチだけ行うべきものです。

最善のアプローチは・・・

1.         Chaouachi, A., et al., Effect of Warm-Ups Involving Static or Dynamic Stretching on Agility, Sprinting, and Jumping Performance in Trained Individuals. Journal of Strength and Conditioning Research, 2010. 24(8): p. 2001-2011.

2.         Cramer, J.T., et al., An Acute Bout of Static Stretching Does Not Affect Maximal Eccentric Isokinetic Peak Torque, the Joint Angle at Peak Torque, Mean Power, Electromyography, or Mechanomyography. 2007. 37(3): p. 130-139.

3.         Kay, A.D. and A.J. Blazevich, Effect of Acute Static Stretch on Maximal Muscle Performance. Medicine & Science in Sports & Exercise, 2012. 44(1): p. 154-164.

4.         McHugh, M.P. and C.H. Cosgrave, To stretch or not to stretch: the role of stretching in injury prevention and performance. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2009.

5.         Small, K., L. Mc Naughton, and M. Matthews, A Systematic Review into the Efficacy of Static Stretching as Part of a Warm-Up for the Prevention of Exercise-Related Injury. Research in Sports Medicine, 2008. 16(3): p. 213-231.

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