クールダウンって効果あるの??

ウォーミンアップやクールダウンについては、スポーツを行う人にとってはルーティンの作業ですが、実際にどの程度効果があるのか知っている人は意外に少ないのではないかと思います。

今回は、科学的に検証されているクールダウンを取り上げていきます。

アクティブクールダウン

アクティブなクールダウンは、活動を伴わないパッシブなクールダウンよりも運動後の回復を促進するのに効果的であると広く信じられています。

このトピックに関する研究はまとめて検証されていないため、この信念が正しいかどうかはほとんど不明のままでした。

今回のレビューでは、様々なタイプのアクティブクールダウンとパッシブクールダウンの効果を、パフォーマンス、怪我、運動後の回復の心理・生理学的マーカーなどを比較したものをまとめています。

乳酸を除去する効果は・・

ダウンで最も効果が検証されているのが、血中の乳酸を取り除く効果です。

ダウンには、血中乳酸を除去する働きがあります。

乳酸は、高強度の運動をしたとき(無酸素性の運動)に筋肉のグリコーゲンが代謝されて発生する物質です。以前は、乳酸は疲労物質と考えられていましたが、現在では乳酸は遅筋に取り込まれ、エネルギーとして再利用されることがわかっています。

そのため、激しい運動後にアクティブなクールダウンを行うと、乳酸除去が早くなるのは確かですが、

それが、パフォーマンスに影響を与えるとは言えないのが現状です。

ただし、運動によって酸性に傾いた身体を元に戻すことによって、解糖系の酵素活性を高めて神経筋に良い影響を与えるであろうことが推察されています。

実際に、解糖系の酵素をヒトの身体から抽出することは難しいので、あくまで仮説の域を出ません。

適切な強度や時間は・・

ダウンの適切な強度としては、イメージよりやや高い強度の方が乳酸の除去は早くなることが分かっています。

また、時間としては20分程度で乳酸は除去されていきます。

おおよその強度の目安としては、

循環を落ち着かせる効果・・

ダウンでもう一つ明らかに効果的なのは

心拍数を戻す・呼吸を整える効果です

実際に、ダウンをした状態と何もしない状態を比較した研究では、ダウンをしたあとに休むと心拍が安静時に戻るのが早かったという結果が出ています。

実はデメリットもある・・

乳酸の除去と心拍の安定については、明らかなのですが、それ以外の効果については検証できていません。

私達が考えているような、疲労を取り除いたり、パフォーマンスを改善したり、身体を柔らかくしたりするような効果は明らかになっていません。

実際には、激しい運動後に試合や練習が続く場合には、アクティブに動かすことによって

筋肉内のグリコーゲンの再合成が阻害され、パフォーマンスが悪化することが報告されています。

そのため、同日に試合が続くような場合にはアクティブなクールダウンはそれほど推奨されません。ゆっくり休んだほうが、体内のエネルギーの浪費を防ぐことができるかもしれません。

注意すべきは、個人に最適なクールダウンはやってみないとわからないということです。

わかっていることとわかっていないこと

米国の大学のアスレチックトレーナーを対象とした調査では、89%のトレーナーがクールダウンを推奨しており、53%のトレーナーがアクティブクールダウンの方法としてジョギングを推奨しているとの報告あります。

みんながやっているから、なんとなくやっているという選手や指導者が大半だと思います。

呼吸や心拍を落ち着かせて、リラクゼーションを得たり、乳酸除去によって身体が楽になるようであれば積極的に取り入れることが大切です。

一方で、試合や練習が続いて身体が疲れている状態暑熱や極寒で体温調節が上手くいかない状態であれば、無理に身体を動かさず、何もしないで完全に休むのもリカバリーの方法です。

科学的な知識を応用して、自分にあったクールダウンを探そう!

1.         Takahashi, T. and Y. Miyamoto, Influence of light physical activity on cardiac responses during recovery from exercise in humans. European Journal of Applied Physiology, 1998. 77(4): p. 305-311.

2.         Menzies, P., et al., Blood lactate clearance during active recovery after an intense running bout depends on the intensity of the active recovery. Journal of Sports Sciences, 2010. 28(9): p. 975-982.

3.         Van Hooren, B. and J.M. Peake, Do We Need a Cool-Down After Exercise? A Narrative Review of the Psychophysiological Effects and the Effects on Performance, Injuries and the Long-Term Adaptive Response. Sports Medicine, 2018. 48(7): p. 1575-1595.

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