スポーツ動作において、目的を果たすために筋肉を上手く使う方法はあるのでしょうか?
ヒトの身体は目的を果たすために、組織化される(=筋肉がグループとして働く)仕組みになっています。
例えば、ボールを蹴るという動きを考えると、インパクトの瞬間に直線的に加える力を大きくすることが、速いボールを蹴るコツになります。
つまり、力を加える大きさと方向によって、動きは作られます。
ただし、その力の生み出し方は人によって様々です。
例えば、ボールを蹴る動作にしても、足を真っ直ぐに振り下ろして蹴る場合と
足を横に振るようにして蹴る場合と
2つの方法がありますが、ボールのインパクトの瞬間に直線的な力が加われば、
どちらもボールは真っ直ぐに飛んでいきます。
非常に当たり前のことですが、ほとんどのスポーツ動作は分解すると、どの方向にどの強さの力を加えるかによって、パフォーマンスは決まるわけです。
もう一つ、走動作を例に挙げて考えてみます。
速く走るためには、地面を強く蹴って床反力を得ることによって前方への推進力に変えるものです。
地面を後方に強く蹴るという力の方向が決まっています
より速く走るためには、地面に強い力を加えることになり、結果的に筋活動が変化するのです。
同じ動きであっても力の加え方で筋活動が異なる
力の方向と強さによって、私たちの筋肉の活動は決定しています。
お尻上げ(ブリッジ)を例に取ると、足の裏を前方に滑らせるようにつま先に力を入れると大腿四頭筋が優位に活動します。
一方で、足の裏を踵側に滑らせるようにお尻の方向に力を入れると大殿筋やハムストリングスが優位に働きます。
見た目だけでわかりませんが、力の方向と強さを調整することで、筋肉の使い方を変えられるのです。
脚を横方向に持ち上げるときも同様で、
少し前方気味に挙げるのと、真横に挙げる、後方に挙げるのとでは股関節の周囲の筋の活動が変化するのです。
動きや筋肉の使い方を変えたければ、力の方向と強さを上手く誘導することが大切
筋肉の働きは、力の方向と強さに影響を受けることがわかれば、後はトレーニングは工夫次第です。
カヌーの動作を例に取ると、体幹の使い方もこの原理を使うことで腹斜筋の働きを誘導することができます。
腹斜筋を利用して、体幹の回旋を促したいのであれば、力の方向は真っ直ぐに引くのではなく、やや外側後方に力を加える必要があるのです。
実際に真後ろに引こうと力を入れようとすると、腕の筋肉や背筋に過剰な負担がかかる使い方になってしまうのです。
これらはmuscle synergyという神経学的な知識を応用しています。
指導のポイントは、力の方向と強さ、それにタイミングが重要ということです。
動作を改善させるのが上手い指導者は、どの方向にどのように力を加えることが大切か指導しているものです。
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引き手の肘、曲がっています。
力が肘に吸収されます。
伸ばした状態の思考をした場合は、どうなるでしょうか。
コメントありがとうございます。肘が曲がっているのは一番下の図でしょうか?
一番下の図は肘を曲げた“引く”漕ぎを示しており、おっしゃる通り、腕に負担がかかり、力が体幹や下肢まで伝わりません。
下から二番目の図が身体を回旋させて、肘をあまり曲げない状態を示しています。見る角度によっては、肘が曲がっているように見えますが、実際はキャッチからミドルくらいまで20~30度屈曲している程度です。素人のモデル作成に限界があり、間違っておりましたら、ご容赦下さいm(__)m