未来をどれだけ予測できるか?
子どもの運動能力についてどれだけ予測できるかを考えたいと思います。
幼少期の運動能力は、その後の運動能力のベースとなるため、トラッキングと呼ばれる持ち越し効果があると言われています。
このトラッキングは、運動能力だけでなく、身体活動量や健康状態などにも影響を与えるため、幼少期の運動能力の重要性は様々な所で注目されています。
今回は、小学校から学校で行われている身体体力テストを用いて、入学時点(小学校1年生)の段階の能力が数年後の能力を予測できるかを見ていきます。
低学年時の運動能力はそのまま移行する
入学時に測定した運動能力は、そのまま3年後に測定した運動能力と関連があり、比例して上がっていきます。
つまり、低学年の時に運動能力が高い子は、高学年でも運動能力が高い傾向にある
これは、実感としても当てはまるもので、小学校でのリレーの選抜選手はほとんど毎年変わらないような気がします。これが現実です・・
予測に適しているのは、走力と腹筋
それでは、低学年時のどの能力が高いと数年後も能力が高いと分かるのでしょうか?
最も分かりやすいのが、走力です。
50m走のタイムの速さやシャトルランの回数の多さは、3年後の体力テストの総得点と強い相関がみられています。
つまり、入学時に走れる子は基本的に小学校段階においては、ヒーロー扱いされます。
そして、もう一つは腹筋です。
体力テストに上体起こしという腹筋の種目がありますが、上体起こしが出来る子どもは、全体的な運動能力が高い傾向にありました。
走力(50m走とシャトルラン)と腹筋の能力によって、3年後の体力テストの総得点の75%ほど予測することが可能でした。
走れる重要性
小学校年代における足の速さは、足の回転(ピッチ)が影響してきます。
中学、高校に入ると筋力が付いてくるので、一歩の距離(ストライド)が影響してきますが、小学校年代では神経系の影響が強いので、足の回転の速さが影響してくると考えられます。
そのため、小学校年代での足の回転の速さは、神経系の能力を反映する一つの指標であるとも考えられます。
また、シャトルランは持久力(有酸素能力)の指標ですが、有酸素能力が高い子どもは運動習慣が確立されている場合が多いので、運動を行う土台がすでに形成されていると考えられます。
小学生の腹筋が示すもの
小学生の腹筋と言っても、アスリートの様に腹筋をバキバキに割るということではなく、姿勢を安定させたり、素早く起き上がったりするための土台となる腹筋が必要ということです。
今の小学生はどうなっているのか・・
特徴的な姿勢があります。
・アゴが前にでる(頸椎前弯の減少)
・猫背姿勢(胸椎後弯)
・腰が立たない(骨盤後傾)
実は、猫背姿勢や骨盤の後傾姿勢は、腹筋が入りにくい姿勢です。骨盤をやや前傾させて、姿勢を保つためには、腹筋と背筋を使って姿勢を保持する必要があります。
腹筋は鍛えなければ、身につかない
運動発達から考えると、腹筋は成長とともに身につける筋肉です。
背筋は、重力に抗して生きていくために無意識でも働いてくれます。これは生まれた時から身体にプログラムされているので、普通に歩行をしていて背筋が全く働かない子はいません。
一方で、腹筋というのは後天的に身につけることによって鍛えられます。そのため、使わなければ発達していきません。
寝ている状態から腹筋を使って起き上がってくる動物は、ヒト以外にはありえません。
腹筋はきちんと行うと、頸部から胸部、腹部へと屈曲するための筋肉が連結するので、運動の基本となる動きとなります。
実際に、走動作においても腹筋と腸腰筋を連動させて、足を大きく速く持ち上げることで、前方への推進力を得ることができます。
正しい走り方を行う上でも、腹筋の機能は不可欠です。
目安としては入学の時点で男女ともに30秒で最低10回はできる必要があるでしょう。
また、シャトルランの目安は入学時点で、男子が45回、女子が35回は欲しいところです。
運動能力の予測は 走力 と 腹筋
小学校入学の時点で、足が早くて腹筋がある子どもは基本的には運動能力が高いと判別できます。
この結果は、あくまで小学校の段階での予測です。
中学生になり、身長が急激に伸びると予測は変わってきますし、高校以降で筋力がつくことによって、能力が上がることも十分に考えられます。
あくまで、一つの研究結果なので自分のチームや選手の体力テストの結果を蓄積して、どういった選手が今後伸びていくのか科学的に検証してみることは大切です。
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