身体は柔らかい方がいいと思っている指導者は圧倒的に多いです。
身体が硬い → 怪我をする という典型的なパターンをヒトは好みます。
選手が問題を抱えた時に、分かりやすい答えが用意されている方が楽だからです。
ヒトが考えるのが嫌いな理由は、面倒だからです。
柔軟性の常識を疑う
柔軟性が高い方が、パフォーマンスが高くなり、怪我も減るかというと一概には断言できません。
今回は、足関節の柔軟性から考えてみます。
足首の柔軟性をみる簡単なテストがあります。
踵をつけた状態で、しゃがみこみができないと足首が硬い(足関節の背屈制限)と判断することができます。
Tatsuya Kasuyama, Sakamoto Masaaki, Rie Nakazawa: Ankle Joint Dorsiflexion Measurement Using the Deep Squatting Posture Journal of Physical Therapy Science 21(2),195-199,2009
実際にこの足関節の背屈制限は、様々スポーツ障害と関連があると報告されています。
挙げられているだけでも、アキレス腱障害、膝蓋腱障害、足底筋膜炎など、慢性的な障害との関連がしてきれています。
基本的には、足関節の背屈制限にはアキレス腱のストレッチが有効とされています。
柔軟性の低さ(硬さ)はパフォーマンスに直結
実は知られていないのですが、身体が硬い方が有利な場合もあります。
身体が硬い状態の利点は、2つあります。
1)硬いことによって反発を得られる
2)硬いことによって動きの無駄が減らせる
1)と2)は、同じ動作でみられます。
ランニング動作における足関節の動きで説明します。
まず、足首(足関節)には底屈と背屈という動きがあります。ランニングやジャンプ動作を行う時には足関節は底屈し、しゃがみこみやランジ動作での踏み込みでは足関節は背屈するようになります。
足首が底屈位にて硬い状態のまま接地すると、床からの反力は前方に加わります。そのため、早く走るためには、接地の瞬間に足首を底屈位で固めて、蹴り出しの際に前方への推進力得ることが必要です。
床反力を得ようとした際に、足関節が背屈方向に動いてしまうと、床反力は垂直方向に向いてしまうため、前方への推進力を得ることができません。
また、足関節の背屈可動域が大きすぎると、接地の瞬間に前足部の部分で反発することなく、足関節が背屈方向に動くことで衝撃を吸収してしまいます。
足関節の背屈可動域は、足部への衝撃を吸収してくれる反面、
床反力を上方向へ変換してしまったり、足部の反発を軽減するため推進力を減らしたりする可能性があるのです。
選手の特性を把握しておく
足首が硬いからといって、足関節背屈の可動域を出すことに専念していると、パフォーマンスが落ちる可能性もあります。
実際に、陸上競技の為末選手は小さいころ水泳をやっていて、足首が柔らかすぎたことが金メダルに届かなかった要因として挙げている(本人は底屈が過剰だったことを問題視している)。
為末選手のブログより引用:http://tamesue.jp/blog/archives/think/20191223
陸上選手やトライアスロンの選手の足首を触った際に、足首が硬かったことが印象に残っているが、ランニングの最適化には柔軟性が低い方がいいこともあるのです。
競技によっては、関節が硬い方が関節が保護されたり、過剰な筋活動をする必要がなくなるので、動作を効率化できることがあるのです。
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