本当にそれは正しいのか?
障害発症要因については、各疾患ごとに要因が検討されているのですが、多くの疾患が予防に成功しているとは言えない状況です。
その1つの要因としては、正しいと思われていることが科学的に検証してみると、誤っていることも少なくありません。
今回は、前十字靭帯損傷における障害発症に関わる動作について考えていきます。
理想的な姿勢とは・・
前十字靭帯損傷の受傷姿勢については、古くから検討されており、膝が内側に入る(Knee-in)状態により、大腿骨と下腿が捻れる状態によって靭帯が断裂すると考えられています。
実際には、下図のようにつま先と膝の向きを真っ直ぐにして、着地動作を行うことが理想と考えられています。
多くの教科書においては、前十字靭帯損傷をはじめとする動作分析ではKnee-in、Toe-outの姿勢を修正し、加えて重心が後方にならないように指導しています。
Knee-inの本質
Knee-in, toe-out(膝が内側に入り、つま先が外側を向く)状態においては、靭帯損傷の危険性が高まると考えられていますが、指導する際には膝を意識してコントロールさせようとします。
これまでの指導方法は・・
下肢をコントロールすることが優先されています。
動作を見るときには膝が内側に入る詳細な要因や現象を検証する必要があります。
靱帯損傷が起こる要因の1つとして、大腿部と下腿部の捻れがありますが、
捻れが起こる要因は、
足部の接地位置と重心の関係によって決まります。
膝が内側に入る際には骨盤が前方に回旋し、股関節が内旋位をとりやすくなっています。股関節(大腿骨)が内旋方向に動くと下腿は相対的に外旋位となります。
同じように骨盤が後方に回旋すると、大腿部が外旋して下腿は相対的に内旋方向のストレスを受けることになります。
つまり、足部の接地にて下腿が固定された状態になり、
重心がどっち側に触れるかによって、下腿の回旋方向は変わってきます。
膝の捻れを引き起こす要因としては、Knee-in、Toe-outよりも足部が固定された状態で上半身ー骨盤をどのように動かしているかが重要となります。
最も重要なのが、どこに身体の重心があり、どのように重心が移動するかを把握することです。
足部が固定された状態であると。。。
骨盤が前方回旋 → 大腿骨が内旋 → 相対的に下腿は外旋
骨盤が後方回旋 → 大腿骨が外旋 → 相対的に下腿は内旋
下肢の動きとともに体幹の重心偏位を把握する
骨盤が前方や後方に移動するのは、重力と関節への負荷に対する適応です。
大腿骨が連動して動くのは・・骨盤の動きであり、
骨盤の動きに影響を与えるのが重心の位置なのです。
前方ー後方、外側ー内側など、動作の中で重心が大きく動く場合には、下肢のアライメントにどのように影響を与えるかを定期的評価する必要があり、対象者が適切で安楽な姿勢を取れるポジションを考慮することが必要となる。
重心をどのようにコントロールするか?
身体重心をどの部分に置くかによって、下肢に対する動きが変化してきます。下肢のコントロール不良は、筋肉と緊張の関係や四肢の長さ、体幹機能の問題など様々が要因があります。
膝に大きな力が働くときには、衝撃を吸収する関節と重心の位置を近くすることのよって、関節へのストレスを緩和することができます。
実際に、体幹の固有感覚(Core proprioception)などの新しい概念や、運動感覚・位置覚の問題も靭帯損傷に関与している可能性が示唆されています。
体幹の傾斜角度によって膝関節へのモーメントや床反力に影響が出てくるため、体幹の動きと膝へのストレスについても整理しておくことが重要です。
前十字靭帯損傷の損傷危険因子については、様々な報告がなされていますが、その人に合った仮説を検証していくことが大切です。
膝外反や体幹の傾斜などの、目に見やすい部分だけをフォーカスするのではなく、隠れた要因が他にもないのか考えておく必要がある。
今回の内容は
靭帯損傷の予防のためには、膝をコントロールするのではなく、重心をいかにしてコントロールし、姿勢を制御することが重要か
ということです。
筋力や可動域(柔軟性)の問題に捉われるのではなく、下肢をコントロールするために最適な方法を検討していくこと大切です。
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