オリンピックメダリストを客観的に作るためには、何が必要かについて考えていきたいと思います。
世界的なスポーツにおいて成功するための要素については、様々な研究がされていますが、どの情報を取り入れるかによって考え方が変わってきます。
前回の話に引き続いて、今回は少し大きな視点で見ていきます。
メダリストを育てるのはどのくらい大変か?
オリンピックのメダルを獲得するために、選手や指導者はもちろん、国を挙げて有望な選手を支援しています・。
実際に、メダルの獲得に影響を与える要因として、才能、トレーニング体制、家族の熱心なサポートなどは、多くのパフォーマンスにおいて重要な役割を果たしています。
しかし、結局のところ、皮肉的ば表現に捉えられるかもしれませんが、チームの全体的な成功の背後にある主な理由は、お金です。
シドニー五輪の経験のあるオーストラリアやロンドン五輪を経験したイギリスは、開催国の威信にかけてメダルを獲得するために、オリンピックに向けて膨大な予算をつぎ込みました。
その結果、様々なデータが世に出てくるようになりました。
メダルにかかる強化の費用は・・
オーストラリアもイギリスも自国開催でメダルの獲得数を大幅に更新したため、その国策については様々な報告がなされています。
その結果分かってきたのが・・
メダルを獲得するためには、膨大な予算が必要ということです。
オーストラリアの結果は
イギリスにおいても、2008年の北京に向けて数年間のトレーニングプログラムに対して2億3500万ポンドの投資から恩恵を受けました。これは、アテネに至るまでに費やされた費用の約4倍の増加です。
2012年のロンドン五輪ではさらに1億6,500万ポンドを費やし、17のメダルを獲得しています。これはおよそ1,000万ポンド(13億円)のメダルの換算です。
オリンピックから目指すもの
実は、国としてはオリンピックを通じて以下のような目的を達成したいところです。
スポーツを文化や教育と融合させるオリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などに基づいた生き方の創造である。
五輪憲章
オリンピック・ムーブメントの目的は、オリンピズムとその諸価値に
五輪憲章
従いスポーツを実践することを通じ、 若者を教育し、平和でよりよい世界の建設に貢献することである
オリンピックを通じて、自国民のスポーツへの関心を高めると同時に、教育的な役割を発信したいのが本音です。
そのため、オーストラリアにおいてもスポーツを通じた教育的な役割を模索していました。
オーストラリアスポーツ委員会(ASC)には、2つの目的があり、(1)優れたスポーツパフォーマンス(2)スポーツおよびスポーツ活動への参加の増加 です。シドニー五輪では、優れたアスリートへの支援を中心に予算を配分しましたが、アスリートの活躍に刺激を受けて、国民全体の身体活動量を挙げたいというのが国の方針です。
しかしながら、実際に五輪が終わっても国民の健康意識に変化はみられていません。統計的に、オーストラリア国民の健康増進には影響を与えなかったと考えられています。
オリンピックから考える・・
オリンピックを通じて、世界平和に貢献したり、自国のスポーツ活動の参加を増やしたり、健康意識を高めたりすることが国の狙いの一つになります。しかしながら、オリンピックという一大イベントであっても、人間の行動は簡単には変えられないのです。
日本でオリンピックが開催されるからといって、日々の生活が大きく変化する人は少数です。一流アスリートがトレーニングを動画配信したからといって、視聴者が同じトレーニングをするかどうかは全く別問題です。
オリンピックについても、実際の表と裏を考えることによって、様々なことが見えてくるものです。
オリンピックのメダルはどうやってとるのか?
オリンピアンを育成するための、システム(タレント発掘事業)が世界的な流行をみせていますが、実はいろんな問題が起こっています。
タレント発掘については、次回現状と課題についてまとめたいと思いますが、メダルの獲得については様々な研究が行われています。
例えば、下記のような変わった視点の論文があります。
この論文は、国民の平均的な握力を調査して、握力の平均値が高い国民性をもつ国ではメダルの獲得率が上がるという報告です。
オリンピックのメダルを獲得するために、必要な能力については様々な研究が行われています。上記のような、印象的な論文もありますが、メダリストを作るための予測モデル(測定すべき項目など)を作ることは非常に難しいことが分かっています。
次回は、タレント発掘に関する功罪について考えていきます。
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