前回の記事にて、前十字靭帯の損傷の発症メカニズムに関する動作の方略について、解説しました。
スポーツの動作は非常に動きが早いので、実は研究が進みにくい分野の一つでもあります。動作の解析に関しては、1秒間に数百から数千コマの撮影ができる機械がありますので、分析できるのですが、どのように認知処理をして動きが行われているのかを、脳や神経のメカニズムから解説することはできていないのが現状です。
前回のカッティング動作における動作方略に関してもあくまで仮説の域を出ないことはご理解ください。
今回は、前回の記事の仮説のもととなっている原理について解説します。
ヒトはどのようにして片足立ちを保持するのか?
姿勢の保持については、原理は簡単で
重心が基底面の中に収まっているかどうか
です。
例えば、立位では骨盤の高さに重心があり、両足を囲んだ部分が支持基底面と呼ばれる部分になります。片足立ちになると、支持基底面が片足分の面積になりますので、片足の真上に重心は必ず位置しています。
姿勢の取り方には2種類ある
この姿勢を保持するためには、方法は2通りあります。
①.重心を基底面に移動
②. 基底面を重心に移動
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片足立位の状態を考えると、①では体幹を支持脚の方に傾けることによって重心を基底面に移動させることによって姿勢を保持しています。一方で、②のパターンでは重心は移動させず、膝を内側に寄せることによって基底面を重心に近づけることによって姿勢を保持させます。
発達の順番は①→②
実際には、①と②が混在した状態で姿勢や動作は成り立っているのですが、発達の順番から考えると①→②の順に獲得していきます。
一般的に、片足立ちが2−3秒間できるのが3歳頃とされていますが、3歳児の片足立では完全に重心を基底面に移動させることで動作を行います。
重心を動かさないで片足立ちをすることは出来ません。
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身体重心を片足に乗せるために、上肢の位置を変えたり、体幹を傾けたり回旋させることで姿勢を取ろうとします。
重心を移動させずに片足立ち姿勢を取れるのは7歳頃と考えられます。
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この時期になると、体幹の大きな動きはみられませんが、それでも個人によって骨盤を側方に移動させたり、回旋させたりする動きはみられます。
なぜ、子どもは重心を動かすのか?
5歳ごろ迄の子どもは、重心を動かしながら、様々な姿勢や動作を学習していきます。バランス能力が大きく変化するのも、この時期です。
ある程度成長して、重心を動かさなくても片足立ちができるのは、筋力的な要素が大きいと考えられます。
特に片足立ちの際には、中臀筋と呼ばれる筋肉が働くことによって、骨盤が傾くのを支えて、姿勢を保持することができます。
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臀部周囲の筋肉が発達することによって、重心移動の少ない姿勢・動作を獲得していくことになります。
そのため、獲得の順番として
重心をたくさん動かす→ 重心を動かさないことを学習する
という原則があることがわかります。
この原理は、非常にシンプルな法則なので、知っておくことでいろいろな場面で応用することができます。
動作を改善させたり、障害予防を行う際にみる視点を増やしてくれるので、この原理を理解しておきましょう。
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