スポーツ科学に関する研究も日進月歩で変わっていくわけですが、今世界で起こっているトレンドについて整理したいと思います。
個人→集団→個人→・・・・
ヒトに関する硏究は全て個人に焦点を当てたところからスタートします。
例えば、スポーツ障害の研究について考えてみます。
選手に怪我が起こった時に、原因を探していきます。すると、柔軟性の低下(身体の硬さ)、筋力の弱さ、バランスの悪さなどが発見されます。
そこで、仮説を立てて、身体が硬い人が怪我をしやすいはずだと考え、測定する選手の数を増やしていき、本当に身体が硬い集団がそうでない集団と比較して、怪我が少ないかを集団同士で比較して検討します。
硏究は常に個人→集団の順番で行われます。
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その後に、何が起こるかというと、筋力が弱くても怪我をしない集団が出てきて、身体が硬くても怪我をしてしない集団が出てきます。すると、今度は違うところに原因があるのではないかと考え、違った測定方法を生み出すことになります。
筋力であればBIODEXやKINCOMなどの筋力測定装置がありますし、筋肉の働きを見るために筋電図測定、さらには素早い動作を分析するために三次元動作解析装置などを使うようになります。
こうした機械は高価で、測定にも時間がかかるため、数名の測定しかできません。数名の結果から、一定の仮説が生まれ、仮説を検証するためにまた多くの人間を測定することになるのです。
そのため、個人→集団→個人→集団→・・・・のループは永遠に続くことになります。
見えないものをみようとする・・
このように、測定に関しては常に新しい測定方法が生まれてくるわけですが、これはテクノロジーの進歩と完全にリンクしています。
筋肉の働きをみるために筋電図が開発され、素早い動きを分析するために三次元動作解析が進歩してきます。
つまり、硏究の新しい流れを掴む一番の方法は・・
テクノロジーの進化に注目すること
が必要です。
新しい硏究分野の創出は、常に新しいテクノロジーに付随します。最近では、遺伝子操作のクリスパーという技術の進歩によって、遺伝的な硏究が行いやすくなったことは広く知られています。
最先端の硏究を行うためには、新しいテクノロジーが自分の分野でどのように使えるかを考えておく必要があります。
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もう一つ硏究で言えることは、なんといっても数です。測定する母数が多ければ多いほど、質の良い硏究として重宝されます。
単純なデータであっても数千〜数万のデータがあれば、ビックデータとして取り扱い統計的な処理から面白い結果を発掘していくことも可能です。
先端技術をキャッチアップするか、単純データを大規模に調査するかが研究には求められています。
そうした中で、日本が得意としているのがMRIや超音波画像診断などの機器の数です。MRIやCTなどは世界でも最も多い台数(人口当たり)を保有している国として知られています。
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そのため、世界のトップジャーナルにはMRIのデータを活用した母数の大きい大規模な硏究が通りやすい傾向にあります。
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MRIやCTをベースにした先端テクノロジーと母数で勝負する硏究は、日本が得意とする分野と言えそうです。
日本が勝てないもの
一方で、単純なビックデータの扱いだけでは、世界には全く勝てないこともあります。
例をあげると、身体活動量に関する硏究については、全くと言っていいほど太刀打ちできません。
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世界を賑わせているコロナウイルスの影響について研究しようとします。すると、大規模な移動データや身体活動のデータを扱う企業には到底かないません。
下記は、アップル社がコロナ感染の影響を示した非常に価値あるデータサイトです。
https://www.apple.com/covid19/mobility
各国の移動量がどの程度変化しているかは、iPhoneやApple Watchのデータから収集すれば一目瞭然です。
アメリカ、ドイツ、英国、イタリアの活動量の変化
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日本の活動量の変化
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韓国の活動量データ
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ニュージーランドの活動量データ
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このようにして、大規模なデータを扱える企業がいると中小規模な大学や研究所では到底戦えるものではありません。
韓国やニュージーランドの取り組みが称賛され、日本の感染対策が遅れている事実がデータとして顕著に現れています。
国家レベルの政策を動かすデータとなり得るので、この分野で勝負するのは特策ではありません。
次に来るものは・・
新しいアイデアというのは、常に何かと何かの掛け合わせによって生まれます。
そうした観点から考えると、これまで行われてきた三次元での動作解析だけでなく、ARやVRなどの仮想空間を利用した動作分析や動作分析中の脳活動計測、動作分析をビッグデータとして収集して機械学習を利用した特徴・傾向分析などが考えられます。
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5Gを利用したテクノロジーが発展してくると、実際の脳活動がリアルタイムに測定可能となり、活動に関わる時間的・空間的精度を高めたデータを集めることができるようになります。
テクノロジーを利用することで、これまで客観的に評価しにくかった神経筋に関する治療手技などは、今後客観性を持たせて取り組んでいける可能性があります。
時代の流れとテクノロジーのUPDATEは注視しておこう❗️
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