肘が壊れる投げ方とは?

投球動作に関しては、いろいろな研究が行われていますが、肘の靭帯が壊れる投げ方についての研究があります。

今回の研究は、2010年から2017年のシーズン中に肘の靭帯(UCL)の再建を行った140人のMLB(米国大リーグ)投手について調べたものです。

Porteny DA, et al: Influence of Pitching Release Location on Ulnar Collateral Ligament Reconstruction Risk Among Major League Baseball Pitchers.Orthop J Sports Med. 2019 Feb 21;7(2)

対照群(問題がない投げ方)と比較した場合、UCL再建を必要とする投手の平均投球位置は、手術の直前の年に横方向に12.2 cm増加しました

肘の靭帯を損傷した投手は、ボールのリリースポイントが側方へ移動したことを証明しています。

これは、つまり投球時に横回転の動きが強くなることによって肘関節への負担が増加することを意味しています。

以前の肘関節の投球障害の際にも、説明しましたが、横回転の動きが強くなるほど肩関節の内旋の動きが強くなり、肘の靭帯へのストレスが増加します。これを客観的に示した研究とも言えます。

今回の研究では、リリースポイントが外側にシフトした要因については言及されていませんが、その要因について考察してみます。

リリースポイントが側方へ移動する要因

リリースポイントが側方に移動してしまう要因については、大きく分けて3つ考えられます。

要因

1.肘関節の問題 → 肘関節の屈曲不足

2.肩関節の問題 → 肩関節の外転不足

3.体幹の問題 → 体幹の側屈不足

いずれの状態においても、投球時のボールのリリースポイントが外側にシフトしていきます。

体幹や肩関節の角度がズレると、リリースポイントは大きくズレますが、肘関節の角度の変化だけでは、リリースポイントのズレは比較的小さくて済みます。これは、根本の部分が少しでもズレると末端の変化量が大きくなってしまうことを表します。

多くの選手は、フォームが変わると打たれやすくなってしまうため、肘から先の部分(前腕や手首)を調整することで、球種を投げ分けています。

経次的に投球動作を観察して、リリースポイントが外側に移動してきたら、要注意です。

ボールのリリースポイントの変化から肘の靭帯損傷を予測できる可能性があります。

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