スポーツ系理学療法分野の人間と神経系理学療法分野の人間には、根本的な考え方の違いが存在します。
スポーツ系の理学療法は、整形外科疾患(靭帯損傷や骨折)やアスリートのリハビリテーションを主に対象とし、神経系の理学療法は、脳血管障害(片麻痺患者、認知症患者)などの脳に問題がある方々を対象にすることが多い特徴があります。
実際には、利用している神経生理学的なシステム自体は共通しているのですが、伝え方やトレーニングの仕方に違いが出てきます。
個人的には、スポーツ系の人間は臨床現場に則した考え方が優勢で、神経系の人間は研究者や科学者に近い考え方が優勢だと思っています。
今回は、体幹トレーニングを例として考えて行きたいと思います。
前十字靭帯損傷において、姿勢の崩れ(体幹の側屈・後方重心)は発症要因の一つと考えられています。ここで姿勢を安定させるために体幹の重要性を痛感したとします。
そこで体幹を強化するためには、腹横筋が重要であることを知ります。
ここからの臨床系(スポーツ系)と研究系(神経系)の思考過程が異なりますので、比較してみます。
それぞれのフローチャートを例に示します。
即効性を重視、対応速度を優先
腹横筋が重要 → 腹横筋が鍛えられるトレーニングはどれか?
トレーニング方法や実技をメインにした学習を好む
論理性を重視、効果の根拠を優先
腹横筋が重要 → 腹横筋の活動はなぜ重要?活動はどうやって起こる?
学術的な理論をベースにした学習を好む
選手(患者)と指導者(上司)で求めるものが違う
トレーナーであれば選手と指導者によって求めるものは異なりますし、理学療法士であれば、患者と上司によって求めるものは異なります。
即効性のありそうなもの・分かりやすいもの・自分でできるもの
説明ができるもの ・根拠の明確なもの・大人数に均質に行えるもの
臨床系は積極的 研究系は理論的
- 臨床系は行動的で、即効性の高いものを選び、早急な対応になる
- 研究系は理論的で、科学性の高いものを選び、熟考した対応になる
いわゆる、体育会系の人材は、行動力が高く、実行のスピードが早いので、現場では重宝され、選手の信頼も得られやすい傾向にあります。一方で、実はあまりトレーニングの理論的背景を捉えていなかったり、考えずに行動に移すデメリットもあります。
理想は、臨床系と研究系のハイブリッド
もちろん、理想的には研究系の思考力を持ちながら、臨床現場で使える形の圧倒的な行動力を獲得することが最も望ましい形です。
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