あなたの言葉は選手に届いていない?

お前ならできるよ

 私が印象に強く残っていることばですが、大学院の入試を相談した際の指導教授の言葉です。

心に残る言葉というのは、発した本人は覚えていないことがほとんどですが、今回は深く届く言葉について考えていきたいと思います。

届く言葉は、未来を作る

心に響く言葉というのは、本人の未来を作っています。

例えば、悩んでいる時に、友人や恩師からもらった刺さる言葉というのは、悩んでいる状態から脱することができて初めて響いたものとして深く残ります。

言葉によって未来が少しでも変わった時に言葉は残ります。

印象的な試合前や試合後に指導者から言われた言葉は、試合に勝っても負けてもその後の人生において、役に立っているから心に残っているのです。

つまり、その言葉に支えられて、言葉を受け取った後の人生がより良いものになった時に、印象に残る言葉は作られます。

残念ながら、逆の場合もあります。

例えば学校の先生に、『あなたは何をやってもダメな子ね』と言われたとします。その言葉が、心に残ったことにより、何もやる気がなくなって人生が形成されることもあり得ます。

実は知らない言葉の使い方

私は、トレーナーや理学療法士として現場の端っこにいて、多くの指導者の言葉を勉強しています。実は、言葉について深く勉強している指導者はあまりいません。

基本的に言葉の使い方は学ぶものではなく、生活の中で無意識に形成されていることが多いのです。

コーチング論やモチベーション論、リーダーシップ論など様々な学問で言葉の重要性を説いているのですが、個人的に整理してみます。

ほとんどの言葉は残らない

あなたが人生において印象に残っている言葉を考えてください。

人生において、印象に残っている言葉というものは驚くほど少ないのが現実です。

しかしながら、言葉というのは一度脳の奥深くまで突き刺さると一生残ることがあります。

言葉を支えにして生きていくこともできますし、言葉を重荷として囚われて生きている人がいるのも事実です。

ここでは、どういう言葉が届きやすいかを考えていきます。

届かない言葉はただの音

まず、選手に届かない言葉は、ただの音です。これは脳の機能上、致し方ない部分もあります。

脳にはそれぞれ機能が割り当てられています。喉の声帯を震わせて声を出しますが、声を音として捉えて意味づけをして、自分の身体に変換したり、自分の言葉として使うためには脳の各々の部分が連携する必要があります。

話を聞いても理解できないのは、

聞いた言葉を自分の頭の中に取り入れられていないから

です。

下の図を見てください。

自分が理解できる状態の時には脳はよく働きますが、少しでも複雑になると脳はフリーズしてしまいます。

相手の表情をみながら、言葉が届いていないと思ったら、

それ以上話してもあなたの言葉はただの音になっているだけです。

言葉と感情がセットになると響く

言葉が相手に届くためには感情が伴うことが必要です。

どういう言葉が届くかというのは、相手にとって下記の感情を伴ったときです。

響く言葉とは・・・

  • 嬉しかった
  • 驚いた・予想外だった
  • 腑に落ちた
  • 悲しかった
  • 傷付いた

記憶に残るためには、感情を動かす必要があります。

また、感情が動いている時には言葉が響きやすいです。特にネガディブな状態の時の方が、言葉は精神的に響くようにできています。

  • 悲観的になっている時
  • 悩んでいる時
  • 困っている時
  • 緊張している時  ・・・

逆に、調子の良い時や自分に自信がある時には、なかなか他人の言葉が入っていかないことも多いです。

無意識に感じていることを言語化する

感情が揺れている時は、誰でも言葉が入りやすいのですが、普段の生活ではなかなか言葉が受け入れられません。

普段の指導の中で意識したいのが、

選手が無意識に感じたり、思っていることを言語化してあげることです。

無意識を言語化する方法の一つに科学があります。

科学=客観化 です。

ビデオを撮影することによって、客観的に自分をみることができ、ビデオをみながら選手に言葉をかけることによってイメージを共有することができます。

選手は、スポーツ活動中はほとんど動きを意識することができないので、そうした無意識の動きを言語化することは大切です。

自分の動きを、速さや角度で数値化することによって違った視点で示すことができます。

言語の幅を広げ、深さを作る

大切にしたいことは、言葉の幅と深さを広げていくことです。言葉が使えるようになると、選手の思考の幅が広がります。

例えば、『スタミナをつけるために、走り込みをするぞ』 という言葉の幅と深さを広げるとすると

『最大酸素摂取量を冬の間に5%あげるために、週2回で低強度(最大心拍の70%程度)でランニングを入れていくぞ』

小学生までは簡単なイメージの言葉で十分ですが、中学生以降は言語能力の高い指導者の方が引き出しが多くなります。

常に難しい言葉を使う必要はありませんが、指導する集団によって少しずつ言葉を変えていくことが大切です。

言葉の幅を広げるというのは、語彙を増やすこと

言葉を深くするというのは、具体的に詰めていくこと

語彙を増やすというの

スタミナ →  持久力、粘り強さ、最大酸素摂取量

具体的に詰めるとは

走り込みをする → 回数、強度、時間、距離、心拍数、乳酸値、疲労度

一流の指導者は論理と感情の使い方が絶妙

言葉が届くためには、感情と論理を上手く使い分ける必要があります。

選手が悩んでいたり、試合の前などの感情が不安定な時には、具体的な指示は行わず、心理的な共感を生む言葉を紡ぎます。

一方で、普段の練習の際には、論理的な話を中心にして、練習の意義や目的、目指すべき数値を明確にしながら選手の言語理解度に応じて、言葉を選びながら話します。

もはや、根性論だけの言葉では通用しませんが、感情の伴わない言葉もまた届きません。

未来を作るとは・・

現代の社会では、データを積み重ねると一定の予測が行えるようになっています。徹底的に論理で追及すると、結果を予測することができます。

後は、その能力を最大限発揮できるかは精神的な部分です。

そのため、論理的に考えながら、最後は精神的に安定させられる言葉を持っているかによって選手のパフォーマンスは決定します。

論理と感情の言葉を使って、選手の能力を最大化しよう‼️

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