運動発達から投球動作を考える

投球動作を分析する際には、多くの人が現在の状態を把握することによって問題点を捉えようとします。

今の状況を変えようとすることは大切ですが、現在の動作に至るまでには、何百〜何千時間もの期間を経て動作は作られていることを知っておく必要があります。

投球動作の発達過程については、以前ご説明しました。

男女の性差から考える投球動作の本質

多くの競技において、根本的な男女差は埋められ難いものと考えており、これは進化の過程において築き上げられた差であるとも考えられています。

Lombardo MP, et al.On The Evolution of The Sex Differences in Throwing: Throwing is a Male Adaptation in Humans.The Quarterly Review of Biology 93(2):91-119.

ヒトの投げる能力の開発は、人間の進化における分岐点の出来事でした。

ヒト以外の動物が投げる行為によって獲物を獲得してきた歴史的経緯は確認されていません。戦闘と狩猟の両方で女性よりも頻繁に投動作を行なってきた男性は、投げるスキルが戦闘と狩猟の成功に不可欠になったため、女性よりも選択的に動作が獲得されてきたと考えられています。

女性よりも男性が投動作に関連する生得的な解剖学的および行動特性を示す根拠が多数確認されています。投動作の発達における性差については、トレーニングや文化的な影響が動作のの性差を消すことができていません。

男性と女性の投げ方の違いをもとに動作を考えていきます。

男女で投球はどのように違うか?

女の子の投げ方
男の子の投げ方

男性と女性の違いは、幼稚園〜小学校低学年の時期に明確に分かれてきます。

女の子投げと言われる投げ方は、肘の伸展の動きが中心になるので、縦回転の動きが顕著です。

一方で、男性の投げ方は体幹の回旋を使った横回転の動きであり、体を捻ると同時に肩関節を内旋(内側に捻る)ことによって、大きな力を生み出しています。

ヒトが速い球を投げられるのは、体幹の回旋の力を上肢に効率よく伝えられるからです。この動きが女性には非常に難しいのです。

実際に最近では男子でも女の子のように投げる児童が増えてきています。

体幹を効率よく使える動き方を幼少期に学習しておくことが、力強い投球動作を獲得する秘訣です。

基本的な投球の動きは10歳までに獲得

横回転の動きは10歳ごろまでに獲得しておくことが望ましいです。

身体の使い方というのは、神経の働きによって作られていくものであり、効果的に学習が進むのが10歳ごろまでと考えれています。

発達過程は縦回転→横回転

学習の過程としては、まずは縦回転を学習して横回転の動きを身につけていくことが大切です。

力強い投げ方をしようと思うと横回転の動きが必要ですが、獲得の過程を考えると縦回転の動きを先に獲得しておく必要があります。

縦回転のメリットは、肘を高く挙げられることと身体の前後の動きを使用できることです。

学習の過程で縦回転を獲得していた場合には、横回転で肘が下がってきた場合に、肘を高くする動きが修正しやすくなります。また前後の動きは、投球時にステップの幅を取る際に、下半身で踏ん張る際に必要になります。

ヒトの運動において、学習していない運動は神経経路が発達していないので目的にあった筋肉が使えずに、円滑な運動を行うことができません。幼少期に様々な動きをした方が良いというのは、たくさんの神経回路を獲得しておくことを意味しています。たくさんの神経回路を獲得しておくと、成長によって身体組成が変化した後にも、時間の経過とともに再調整しやすくなります。

そのため、縦回転も横回転も学習してきた子どもは、中学や高校になってからフォームを修正しようとした時に適応しやすくなると考えられます。

投球動作を発達の過程から考えて動きを分析しよう‼️

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です