できる人間の学習理論

今回のテーマですが、長期的に成功を収める人の特徴について、学習理論から考えてみたいと思います。

できる人間 = 学習ができる人

学習理論は体系化されており、どうやったときにヒトは学んでいくのかが科学的に明らかにされています。

このサイトでは、主にスポーツ選手がどうやったら上手く動くことができるかに焦点を当てていますが、学習理論のエッセンスは様々な分野に応用できます。

面白いのが、学習理論というのはディープラーニングや機械学習などの人工知能の技術とも関係が深いものです。

その理論について簡単に説明していきます。

誤差学習 = 行動と失敗から学ぶ

学習の中で、誤差学習というものがあります。

誤差学習というのは、実際に動く予定の状態と動いた後の状態を比較することによって、フィードバックを受けて修正することによって学習していくことです。

ヒトの動きに関しては、小脳という部分がその機能を果たしているのですが、脳の運動野と呼ばれる部分から実際に身体を動かす情報のコピーが小脳に渡ります。一方で、身体が動いた情報に関しても筋肉や関節から小脳に情報が上がってきます。

この入力と出力の情報を調整することによって学習が成り立っています。

つまり、この学習において重要なことが

・実際に行動しないと学習できない

・失敗を重ねて学習していく

という2つの特徴があります。

学習するためには、実際の行動と失敗という要素が必ず必要になるのです。

強化学習 = 快楽による学習の促進

学習の理論に強化学習というものがあります。

これは、行動して得られた結果を期待することによって、行動が促進されるという理論です。

実際に得られる報酬が期待していたものよりも大きかった場合に、ドーパミンと呼ばれる脳の快感物質が放出され、行動が強化されます。

一方で、期待された結果が得られない場合には、行動を回避するようになっていきます。

実際にトップアスリートは、この報酬関連の脳活動が高いことが示されています。線条体や視床と呼ばれる脳を計測した研究で構造的な特徴が明らかにされています。

トップアスリートの活動が高いことが示されている(Marco, Plos one 2015)

トップアスリートは、脳の構造が競技を粘り強さと関連していると考えれています。

トップアスリートはどう考えているのか?

トップアスリートは脳の報酬系の活動が一般の選手とは違うことがわかっていますが、考えられる要因は2つです。

① 長期的な成功を期待して活動が続けられる

脳は期待をすることが大好きです。明確な目標を設定して、その行動を行うことによって得られるメリットを享受するために、行動を強化していると考えられます。多くのオリンピック選手やプロ選手は、将来の自分をポジティブにイメージすることによって、快感を得ているのです。

② 競技をすること自体が快感として作用している

もう一つは、自分が行なっている競技自体が楽しくて仕方ない狀態の時に報酬系は強化されている可能性です。ハードな練習自体が楽しくて仕方ない、練習によって強くなる自分が好きという状態です。

これは、トップアスリートだけでなく、長期的に成功する人の特徴でもあります。

仕事が楽しくて仕方ないから努力ができるタイプと継続的な努力によって成功を期待することによって快楽を得ているタイプが存在するのです。

報酬系の落とし穴

人が行動を起こすためには報酬が必要ですが、報酬を短期的にみるか長期的にみるかによって生み出す価値が変わります。

行動を起こした結果として報酬が得られた場合、ヒトは再び報酬を求めて行動を繰り返します。

ここで報酬の落とし穴があります。

報酬は、行動を強化するためのものですが全体として報酬によって生み出される価値を考えておく必要があります。

行動経済学の実験などで証明されているのですが、

例えば、お金をもらってゴミ拾いをする場合とお金を受け取らずにゴミ拾いをする場合では、どちらがゴミ拾いに対する満足度は高くなるでしょうか?

正解は・・お金を受けとらない場合です。

金銭を報酬として仕事をしている場合には、経済的なメリットがなければヒトは行動を起こさなくなります。

ヒトは、

“ゴミ拾い=お金をもらうべき大変な仕事” と整合性を取ろうとします。

一方で、金銭を受け取らずにゴミ拾いをした場合には、

“ゴミ拾い=社会的に必要な価値のある仕事”

という受け留め方をします。

そうすることによって、価値のある仕事をしている自分が形成され、自己肯定感が高くなります。

もちろん金銭的な報酬が動機づけとして一概に否定することもできません。大金を稼ぐプロ野球選手やサッカー選手を夢見て、行動を継続することは一つの報酬です。

褒めても貶してもいけない

報酬系の仕組みを考えた場合、褒めるという行為には危険が潜んでいます。

例えば、子供を褒めて育てた場合、褒めるということが報酬系として作用して行動が強化されるようになります。

そこで、何が起こるかというと

褒められなければ、行動が強化されない

という事実です。

よくあるのが

「私は褒められて伸びるタイプなんです❤️」というセリフ

だいたいこのセリフを使う人間は仕事があまりできません。褒められなければ仕事ができないからです。

また、叱ったり怒ったりすることが続くと、脳が委縮してしまい、そもそもの行動を起こさなくなります。

できる人間の学習とは・・・

・行動と失敗をたくさん繰り返すことによって学習していく。

(圧倒的な行動量とチャレンジの回数が重要)

・長期的な成功を期待することによって強化学習が行われる。

(他人からの期待よりも自分で自分に期待する、短期的な報酬に左右されない。)

脳の仕組みがわかれば、努力を効率化できる

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