教育方針は様々で、養育書をみれば情報に振り回される毎日です。
親にとっては、子育ては失敗できないものというプレッシャーがありますので、完璧な子育てをしたいところです。
しかしながら、子育てなんてものは基本的に思い通りにいかないものなので、親がどういう哲学・考えを持って子どもに接しているかが大切だと思います。
個人的に大切にしている2つのこと
私が幼少期の子どもに大切にするのは2つだけです。
言葉 と 運動 です
この2つについて説明してみます。
言葉の重要性
ほとんどの学力のベースは読解力です。職業柄、国家試験の問題や学術書に触れる機会が多いのですが、すべての学問は言語によって成り立っています。
言語が理解できれば、頭の良さにつながりますし、コミュニケーションにおいても有利に働きます。
数学や物理は、言葉の定義を徹底的に突き詰めて、疑いようのない法則として言語化(文字化)されたものです。
では、言葉を大切にするとはどういうことか?
言葉の使い方 = 語彙の豊富さ
言葉を大切にするのに重要なことは、語彙を増やすことです。
言語の学問の世界でよく使われる研究があります。
これは、世帯の収入別によって単語の数:語彙の豊富さが明らかに異なっていたことを示しています。
子どもは親や周りの環境から言語を習得していきます。しかも、親の口癖をいつの間にか幼稚園で使っていることなどは日常茶飯事です。
身近な環境の言葉の使い方によって、子どもの語彙は変化します。
語彙がコミュニケーションに影響する理由
例えば、単純な話で英語を話すときには単語を知っていなければ会話は成り立ちません。また、相手に自分の気持ちを伝える際にも、細かいニュアンスを伝えたり理解するためには、言葉を適切に使えるかどうかが重要です。
例えば、野球のピッチングでの一例をみてみます。
あいつは投げるときに肘が下がって横投げになっているから、直した方がいいな。シュート回転はそれが原因だ。
“肘が下がる” という言葉一つだけを使うのか、
肘の問題なのか、肩の問題か、それとも体幹の問題なのか、抽象的な指導を自分で具体的なポイントに変換して修正できるのか、選手の読解力によるところが大きくなってきます。
親や指導者の力量は、語彙の豊富さとも言えます。
実際に、野球の名監督である故・野村克也氏は言葉の重要性を感じて、引退後に多くの書物を読み漁ったことは有名な話です。
実際に、2018年のLENAという調査では、赤ちゃんと話す量(知的相互作用)は思春期のIQに関連していることがわかっています。このデータは、18-24か月の間に経験した会話の量と、10年後のIQ、言語理解、言語処理スキルとの間に有意な相関関係を示しています。
起こっている現象を言語化して、赤ちゃんに伝えたり、指導者であれば選手にわかりやすい言葉で伝えることが重要です。
脳の発達から考える
実際に脳の発達から考えても、幼少期に言語は重要な役目を果たしています。生まれてから5歳ぐらいまでは様々な感覚を経験させます。たくさんのものに触れたり、いろんな味のものを食べたり、いろんな音や言葉を受け取ることが必要です。その後、5歳以降では聞いた言葉を使って会話を組み立てたり、いろんな動きを経験して、身体の動かし方を学んだりしていきます。
運動や言語を獲得した後に、認知(考える)という能力が育まれます。言葉を知らないと考えることができません。また、自分が経験していないことを考えたりすることも、小学校高学年までは難しいのが実際です。
脳の発達には順番があると考えられています。言葉を話すよりも、聞く方が先に発達し、身体を動かすよりも先に感じることを体験していきます。
赤ん坊の段階で、たくさん話かけられ、たくさん触れられたこの方が脳の成熟において有効なのです。
運動の重要性
言葉ともう一つ重要なのが、運動(遊び)です。
ヒトの筋肉の中には、実際の動きを感じるセンサーが内蔵されています。筋肉をいろいろな状態で動かすことによって、感覚の神経が活性化されます。
また、筋肉の中のセンサーの役目をする神経の活動を促すためには、自ら不安定な動きにチャレンジすることが一番神経が活性化されると考えられます。
主体的に探索的に身体を動かす作業は、全身の感受性を高めます。
筋紡錘と呼ばれる筋肉のセンサーは、自分の身体がどの位置にあり、どの程度の速さで動いているかという感覚を脳に伝えます。この能力は、スポーツを行う上では不可欠の能力です。
また、このように自分の身体を動かすことによって、イメージが形成されます。運動イメージというのは、自分の身体を客観視する能力です。
運動イメージに関係する面白い研究があります。
下の図のように、手だけが画面に映し出されて、右手か左手かを瞬時に答えるという検査です。大人は頭の中で、手の角度を変えて判断するのですが、
子どもは自分の手の角度を実際に動かして、右手か左手かを判断します。
ここから、わかることは運動のイメージを作り出すためには実体験が必要ということです。自分の身体を実際に動かして感覚入力を行い、体感として脳にイメージを作る必要があります。特にこの運動イメージが形成されるのが5歳から9歳ごろと言われており、いかに幼少期に様々な遊ぶ体験が必要かということです。
運動イメージの凄さ
運動をイメージする能力は、頭の中で物事を考え構成する能力とも言えます。実際に、この能力は学力にも大きく関係しています。
上の図のような問題は、小学校の入試問題などにも使われます。こうした問題は運動イメージの検査内容と酷似しており、空間認識や数量感を獲得し、数理的能力を育むベースともなる力です。
実際に、上記のような問題を解くにあたって、ドリルやワークなどの問題集で学習する方法もありますが、紙面上でやるよりも効果的な方法があります。
それは、実際にブロックを積み重ねたり、パズルを組み立てたりして遊ぶことです。幼少期は、二次元平面での空間認識は得意ではありません。実際の三次元空間でモノを自分の手で動かして、様々な視点から見ることを経験することで培われていきます。
運動と言っても、野山を駆け回ったり、公園で外遊びをすることはもちろんですが、段差を飛び降りたり、細い道を継ぎ足歩行したり、石やブロックを積み上げたり、身体を通じて世界につながるという意味合いです。
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